- 2009年8月28日
方言研究の各種方向性と地域言語学の提唱
田中宣廣(岩手県立大学宮古短期大学部准教授)
私の専門領域は日本語のアクセントの研究です。その研究をとおして,私が学んだ言語全般の捉え方をお話しします。
言語の基幹構造を解明するアクセント研究では…
- 2009年8月14日
「蝶々」は「まぐろ」?
田中典子(清泉女子大学教授)
もう20年くらい前、私は英国のランカスターという街に留学し、あるイギリス人の家に間借りしていた。英語で生活する毎日に疲れたとき、その家の居間にあるピアノを弾く…
- 2009年7月31日
計算と記憶:言語処理の脳内メカニズム
伊藤たかね(東京大学教授)
中学校で習うように、英語動詞の過去形にはwalk/walked, jump/jumpedのような「規則活用」と、sing/sang, grow/grewのよう…
- 2009年7月17日
皮肉の表現
河上誓作(神戸女子大学教授)
私たちは毎日のように皮肉の表現を用いています。しかし、皮肉の表現はなぜ言いたいことの逆を言うのでしょうか。実はこのような単純な質問も、言語学的に説明しようとす…
- 2009年7月3日
語法・文法から語用論へ
田中廣明(京都工芸繊維大学教授)
昭和48年4月、神戸市外国語大学という小さな、当時は校舎も戦後すぐ建てられたような大学(高校の校舎より古かったような気がしてがっかりしていたが)に入学した。これ…
- 2009年6月19日
園芸動詞との出会い
松本マスミ(大阪教育大学教授)
今から15年前、私は米国Massachusetts州のNorthamptonという町で9ヶ月を暮らした。冬は雪に覆われている通りも、5月の半ばを過ぎると、まる…
- 2009年6月5日
「言葉は人なり」
林宅男(桃山学院大学教授)
最近「品格」いう言葉が注目を浴び、一時「~の品格」と題した本が続いて出版されました。品格と言えば、「文は人なり」という諺がよく使われます。これは、18世紀のフ…
- 2009年5月22日
複合語内の他動詞のふるまいに見る言語普遍性
小川芳樹(東北大学准教授)
ノーム・チョムスキーという言語学者は、ヒトには「普遍文法(universal grammar)」という言語能力が遺伝的に備わっていると主張しています。小稿では…
- 2009年4月24日
否定の中央線(言語学の随筆)
小泉 保(日本言語学会顧問)
わたしは「箱根八里は馬でも越すが、越すに越されぬ大井川」と俗謡で歌われていた大井川のほとりで生れました。たが、住んでいた島田市には、旧制中学校がなかったので、…
- 2009年4月10日
同じことの不思議さ
岸本秀樹(神戸大学教授)
世界にはいろいろな人がいて,実にいろいろなことばが話されています。そして,異なることばを比較してみると,どう違っているかということが話題になりやすいのではないか…
- 2009年3月27日
左は左、右は右?
内田聖二(奈良女子大学教授)
たとえば、「左」の定義を国語辞典でみてみることにしましょう。
(1) 南を向いた時、東にあたる方(『広辞苑』(第6版))
この定義で「左」の語…
- 2009年3月13日
ことばの構造
西岡宣明(九州大学教授)
高校時代の私にとって「英語」は暗記が勝負の退屈な科目でした。とりわけ、文法は、試験のためにひたすら丸覚えしたものでした。大学に入り、ことばの研究、特に、ある文…
- 2009年2月27日
ことばって面白い、と思ったのは …
吉村あき子(奈良女子大学教授)
中学生のころにすでに大学で英語学を勉強しようと、英語学が何かもはっきり分からないのにぼんやり思っていたように思います。初めて学んだ外国語の英語に興味を持ち、必…
- 2009年2月13日
「言語学への誘い」(2)
稲田俊明(九州大学教授)
問題を科学的方法で解くことに言語学の醍醐味があると述べました。具体例として、前回触れた第2の問題について考え、既存の有力な仮説にチャレンジします。
ま…
- 2009年1月30日
「素朴な疑問に導かれて」
谷口一美(大阪教育大学准教授)
思い返してみると、私にとって言語学のきっかけは、まだ「言語学」という学問の存在さえ知らなかった頃、英語の学習を通じての素朴な疑問だったように思います。…
- 2009年1月16日
a/an を付けるべきか付けるべきにあらざるか
樋口昌幸(広島大学教授)
試験問題に冠詞が出題されることはほとんどないので、受験目的で英語を勉強しているときには冠詞がむずかしいと思うことはないかもしれません。しかし,英語を使う仕事に…
- 2009年1月2日
ことばの魅力
鈴木 猛(東京学芸大学准教授)
大学・大学院の時の英語学・言語学の授業は衝撃の連続でした。中でも動詞周辺の意味の階層は、ことばの普遍性を垣間見ることが出来るので特に印象に残り、今では自分の講…
- 2008年12月19日
「一旦ドア閉め整列乗車」
石居康男(神田外語大学教授)
ラッシュアワーのJR東日本のターミナル駅では、乗客が手前の駅から乗ってそのまま折り返し座っていくのを防止するために、全員車両から降りてもらい一旦ドアを閉め再び…
- 2008年12月5日
「語の文法」
由本陽子(大阪大学教授)
私が長年飽きもせずに取り組んでいるのは、「語の文法」です。といっても多くの人にはピンと来ないでしょう。単語は、辞書に記載されているもので、語学学習では暗記の対…
- 2008年11月21日
「言語学への誘い」(1)
稲田俊明(九州大学教授)
読書案内に、この本を読むと、「地球の裏側のある町の路地裏を掘っていたら、いつの間にか自分の家の庭にポッカリ開いた穴に通じていることに気づかされる」という解説が…
- 2008年11月7日
単純な文ほど難しい
西山佑司(明海大学教授)
今から40年以上も前のことであるが、生成文法の考え方が日本でもすこしずつ浸透しはじめた頃、私は、ある高名な言語学者から「チョムスキー派のやっている仕事はThe…
- 2008年10月24日
言語学と言語教育:話すのに文法って必要?(Part 2)
長谷川信子(神田外語大学教授)
最近の大学生に特徴的な英文の間違いに、Tom was riched. Tom is watch television. Tom was studied Eng…
- 2008年10月10日
複数を表す -sの面白さ
秋元実治(青山学院大学教授)
英語を習い始めて、日本語にない文法現象として気が付くことは、英語に見られる単数・複数の区別であろう。複数形は単数形に複数接尾辞 -sを付けることにより作られる…
- 2008年9月26日
「飲む」とdrinkとSVO
時崎久夫(札幌大学教授)
高校2年の国語の授業。先生が僕たち生徒に質問しました。「英語のdrink water, eat soup, take medicine, smoke a ci…
- 2008年9月12日
比較の効用
原田かづ子(金城学院大学教授)
日本語が母語である私たちにとって、日本語は空気のように当たり前であり、特に日本語について考えることは、通常ないと言ってよいでしょう。また、私たちは遅くとも中学…
- 2008年8月29日
研究に心ときめく瞬間
戸田貴子(早稲田大学教授)
授業で「外国語を学習した経験のある人はいますか」と尋ねると、ほぼ全員の手が挙がります。そのあとで「発音がネイティブレベルだと思う人」と言うと、ほとんどの人が手を…
- 2008年8月15日
言語学と言語教育:話すのに文法って必要?(Part 1)
長谷川信子(神田外語大学教授)
30歳以上の人(ですから、ほとんどの教員)にとっては外国語(英語)を学ぶことの大きな部分は「文法を学ぶこと」だったことでしょう。それが、ここ10年位の間に(具…
- 2008年8月1日
“物には名前があること”を知ってから
前田富祺(大阪大学名誉教授)
私は小さいころから身のまわりの物を集めることが好きだった。建具屋へ行っては木っ端を集めて、仕事場の片隅で遊んでいた。河原へ行っては石を拾い、山へ行っては草や虫…
- 2008年7月18日
形式と解釈のインターフェース
金子義明(東北大学教授)
言葉には、語順をはじめとする文の形式上の特性と意味解釈がからみあう現象が、数多く存在します。例えば、次の現在完了形の文には二つの解釈が存在します。
(1…
- 2008年7月4日
教えていただいた日本語学と伝えていく日本語学の間で
安部清哉(学習院大学教授)
自分の大学学部時代の講義の記憶は、四半世紀も過ぎた今になると、興味のあった日本語学や言語学関係でさえ、もはや断片的である。それでもいろいろ面白かったという印象…
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